長野県は信濃の国と呼ばれ、島崎藤村の「夜明け前」の「木曽路はすべて山の中である」のとおり、海が無く10カ国(現在の8 県)に囲まれているので、信濃国を貫通する中山道がそれら東西南北の地域の文化を運び伝えてきた歴史があり、長野県は伝統文化の集積地として注目されています。
1月 天龍村の霜月神楽の一つである坂部の冬祭りは正月の1月4日に、天龍村の坂部地区にある「大森山諏訪神社」で夕方から24時間行われます。日が暮れる頃、神輿の行列が境内の大松明の周りを伊勢音頭を歌いながら練り回り、やがて湯立ての釜を浄め、子供たちの舞「花の舞」が始まります。明け方に赤鬼が大鉞を持って現れ、二人の宮人が捧げ持つ松明を鉞(まさかり)で切る「たいきり面」が始まり、火は舞殿いっぱいに飛び散り、この祭りの一番の見所となります。
野沢温泉村の道祖神祭りでは、42歳の厄年の男性と、25歳の厄年の青年が山から木を伐り出して当日の昼までに社殿を造ります。その夜、社殿近くに積まれた粗朶(そだ)が点火され、これを元火として火祭りが始まります。厄年以外の男たちが火付け役となり、社殿めがけて突入する。これに対し、厄年の男たちが火消し役となる。激しい攻防戦の後、手締めが行われ、社殿に火がつけられる。燃え上がる社殿に、長男の成長を祈願して初燈籠が次々に燃やされ、祭りが最高潮に達します。
下伊那郡阿南町の新野の雪祭りは、春祈祷の神事の代表的な祭りです。当日に雪が降ると豊年になるという五穀豊穣祈願で、新野に雪がないときは峠まで取りに行きます。雪祭りに使用する仮面は、墨、胡粉、紅ガラだけで仕上げた素朴さが特徴です。
3月 昔から馬の産地として名高い土地にふさわしい祭りの時又初午はだか祭りは神馬神輿をかついで天竜川へ行列し、川に飛び込んで神輿洗いをするが、神水を汲み上げる樽神輿と五穀豊穣を祈願する米俵神輿とともに川の中でもまれるのが壮観です。樽神輿に御神水をを汲みこんで長石寺へ帰った人びとは、この御神水で木馬の目を洗います。
4月 荒々しく雄大な祭り、諏訪大社の大祭御柱祭は申・寅の年(7年目毎)に行われ御柱を建てる祭事です。クライマックスは、御柱山だし祭りの断崖での御柱木落としの場面で、男の度胸試しにふさわしい壮観な見せ場となり、大勢の見物人でうまります。里曳き祭りも騎馬行列や長持行列町を練り歩き、出し物や露店が立ち並ぶ大変賑やかなお祭りです。
4月終わりの雨宮の御神事は雨宮坐日吉神社の祈年祭として行われるものです。 起源ははっきりしませんが500年を超える伝統があるといわれている。神事本来の意味は、疫病や田畑の荒廃といった祟りの元凶となる怨霊を、華やかな踊りやお囃子で盛大に送り出すというものです。特に、神事終盤の獅子四頭が踊り歩き、橋の上から宙吊りになる「橋懸(はしがか)り」が有名です。
7月 飯山市瑞穂の柱松柴燈神事は、修験色の色彩を色濃く残す神事で、五、六歳の男児二人を「松神子」と呼ぶ祭りの主役に据え、この二人を青年が背負って二本の柱松によじ登り、柱松に火をつけ、「松神子」を下におろすとともに柱松を競争で倒す。東西の柱松の倒れ方で、その年の吉凶を占います。
8月 松本ぼんぼんは昔からの盆行事で江戸時代の七夕踊りや小町踊りの名残りを残しています。「松本ぼんぼん」という歌に合わせながら、市内を連(れん)と呼ばれる一般公募の参加グループが威勢のいい掛け声とともに踊るお祭りで、普通の盆踊りより曲のテンポは速い踊りです。
同じ日に長野市では長野びんずるが行われ、やはり連と呼ばれる200以上のグループが参加して踊ります。しゃもじを打ち鳴らし踊る振り付けが基本ですが、連によっては創作ダンスやパフォーマンスなどを披露します。「びんずる」とは、善光寺に祀られている「おびんずるさん」にちなんだ名称です。
新野の盆踊りは、市神様の前に櫓をたて、切子燈籠を吊るして踊ります。踊りの種類は7つで、珍しいのは踊り収めに踊られる「能登」です。この曲になると踊り手は踊りながら瑞光院前の広場まで行く。持ってきた切り子灯籠を積み重ね、行者が呪文を唱え九字を切り、刀を抜いて道切りの式を行う。花火の合図で切り子灯籠に火がつけられると、一同振りむかずに秋歌を歌いながら帰ります。振り返ると精霊が戻ってきてしまうといわれ、古い習俗が残されている盆踊りです。
佐久市の望月の榊祭は8月15日の夜に行われる火祭りで、盆の送り火の一種とみられます。燃えさかる松明を手にした大勢の青年が松明山から駆け降りてくる。一条の火の帯のように見える松明は、望月橋の上から鹿曲川に投げ込まれる。これが済むと榊神輿が登場し、荒々しくもまれ、時には地面に落とされる。榊によって土地が清められるのである。
9月 飯田市の七久里神社秋季祭典 裸まつりは夜の祭りです。各集落から選ばれた若者が腰に太い注連縄を付け、手に大きな桶を持って頭上にかざして振り分けながら七久里神社へと進む。神官からお祓いを受け、「しんせん」と称する筒花火に点火する。この花火が散る中で裸男の桶振りが続けられ、最後に高い柱の先に取り付けられた大三国(手筒煙火)に点火する。勇壮な裸祭りは男の祭りであるとともに火の祭りです。
10月 木曽駒で知られている南木曽町の田立花馬祭りは細い割竹に5色の色紙を付けた「花」と称するものを馬の鞍につけて、お囃子に合わせて馬の行列を神社の境内に繰込む。しばらくして太鼓が打たれ見物人がその「花」を奪い合う、「花奪いあい祭り」です。
11月には長野えびす講煙火大会が開催されます。長野の煙火の歴史は古く、江戸時代から盛んであったと伝えられ大正時代には、煙火師を厳選し全国の煙火師にとって、この大会への参加は「出世煙火」とまでいわれるようになりました。最近では全国屈指の煙火師を招き新作花火コンテストも始まり、ファンを魅了しています。
12月 安曇野神竹灯は穂高神社の境内で行われる神秘的なイベントです。安曇野の神「穂高見命」の姉にあたる大分県竹田市祖母山の神「豊玉姫」から贈られた1万本の竹灯籠に火が灯ります。この竹灯籠は「孟宗竹」であり、竹田市で開催される「たけた竹灯籠」で灯りが灯されるものです。



長野県の花はりんどう
長野県の鳥はらいちょう
長野県の木はしらかば