本州の中央に位置する愛知県は東西に流通した文化を吸収すると共に名古屋、豊橋などの都市、奥三河地方の農村、知多、渥美半島の漁村などの自然環境を多く重ね持っているため、それぞれの営みの中で育まれた、たくさんの伝統文化を伝えています。
1月 三河の古刹鳳来寺に伝わる鳳来寺田楽は薬師如来の信仰が結びついた田楽で、年の始めに豊作を願う神楽や田遊び、呪師芸、猿楽など豊富な芸能を含む三河、信州、遠州のいわゆる三信遠山間に分布する修正会の芸能の一つです。
大漁を願い海辺の左義長として行われている知多半島先端の町、師崎の新年の風物詩師崎左義長まつりは正月飾りやお守り、お札などを燃やす「どんど焼」の中へ、裸姿の若衆が長さ10メートルの大幟(のぼり)を正月飾りやお札を納めた長さ約2メートルの紙で作った舟とともに盛大に燃やし尽くす豪快なお祭りです。
旧暦1月 尾張大国霊神社 はだか祭は正式には儺追神事(なおいしんじ)と呼び、裸男が群れをなして拝殿に駆け込むのも壮観ですが、厄年の者の中から選ばれた儺負人が神男となり、人々の罪けがれを塗り込んだ鏡餅と人形を背負って追放され、その鏡餅を捨てるのを神官が拾って土中に埋め、すべての災厄を封じ込めたとする神事には、古俗の信仰がよくうかがえます。
2月に東三河地方に春を告げる祭りとして豊橋鬼祭は約1000年前から受け継がれてきた祭りです。神事は多岐にわたるが「天狗と赤鬼のからかい」が最も盛り上がり、天狗との戦いに負けた赤鬼が境内を出て町内を駆け回り、白い粉と一緒にタンキリ飴を観衆に向かってまき散らす。この粉に混じった飴は厄除けになるといわれ、観衆も頭から粉を被り、あたり一面が真っ白になります。
4月の犬山祭は国宝犬山城の麓にある針綱神社の例祭です。1日目は試楽祭(しんがくさい)、2日目は本楽祭(ほんがくさい)と呼ばれ、2日間にわたり山車の祭りが繰り広げられます。3層の車山13輌が町に繰り出し、笛や太鼓に合わせてからくり人形の秘技を披露します。夜は、各車山に365個もの提灯が灯され満開の桜並木の町内を巡る様子は、さながら錦絵巻のようです。
5月 知立神社の祭礼である知立まつりは、1年おきに本祭と間祭がある。本祭の山車では、「知立文楽」との名があるように、からくり人形を演じる山車のほかに、山車の上で三人遣いの人形浄瑠璃を上演する山車が四台ある。山車文楽は全国的にみても極めて珍しいものです。間祭は、勇壮華麗な5台の花車が繰り出されますが、「知立文楽」と「からくり」はありません。
半田市亀崎地区の亀崎潮干祭は祭神である神武天皇が海よりこの地に上陸したという伝説から、豪華な刺繍幕や精緻な彫刻で装飾された見事な山車5輌の山車を干潮の浜辺に曳き下ろして横列に並べ、再び陸へと曳き上げる勇壮な祭りで、男衆の熱気と興奮、鳴り響くお囃子の調べと威勢のよい掛け声などを体感できます。
7月 南知多町豊浜地区の豊浜鯛まつりは20メートルもある巨大な張りぼての鯛が引き出されます。道中を練ったり、観衆の声援を受けながら海の中に入って泳ぎ回る姿はまことにユーモラスです。さほど古い造り物ではなく、明治中期から漁師町ということで魚類の造り物を作り、さらに大正の初めの大魚を祝って大鯛の造り物とすることになったといわれています。
疫神送りの夏の祭り尾張津島天王祭は、稚児打廻し、神輿渡御、市江車など様々な行事があるが、圧巻は宵祭りの夜の巻藁船の曳行と、翌朝の朝祭りの車楽船の登場です。舟二隻をつないで屋台を乗せ、その上に椀状に一年間の日数の提灯を飾った巻藁船は、夜になるとその提灯の火が水面に映えて美しい。その巻藁船が翌朝になると能人形を乗せた車楽船に飾り替えられ、全く装いも新に水上に姿を現わす。まさに夏祭りを代表するものといえます。
8月 菅生祭鉾船神事・奉納花火は菅生川に三層の楼を構えた鉾船を浮かべ、天王囃子を奏しながら川を回遊する。船に吊られている紅提灯に火を点じると、それが川面に映えて美しい。これにさらに彩りを増すかのように手筒花火が打ち上げられ、水中には金魚花火が放射される。まさに水と火の饗宴とも呼べる夏祭りです。
お盆に行われる信玄塚の火おんどり は、天正の長篠合戦で戦死した武田の軍勢の戦死者を慰めるためにはじめられたとするが、元来は盆供養の行事だったとみられる。道行囃子を奏しながらの大松明の行列や、大松明を振り回しての乱舞は壮観で、辺りは熱気に包まれ、その明かりは幻想的に闇を照らします。
10月 名古屋まつりは名古屋の秋を彩る最大の祭です。メインとなる絢爛豪華な行列は、織田信長公・豊臣秀吉公・徳川家康公の三英傑が行進する郷土英傑行列のほか、歴史と伝統に彩られた「山車揃」(堅牢で豪華な山車)「神楽揃」(獅子頭を納めた神楽屋形)、フラワーカーパレードも華やかに繰り広げられます。
豊田市の猿投祭りには、「棒の手」が演じられる。「棒の手」は愛知県内で広く行われていて、その芸態は、棒・木刀・真剣・長刀・槍・鎖鎌・十手・傘などを用いて武術的な演技の型を見せるもので、その流派は十指を超えています。
10月に行われる蒲郡市の三谷祭(みやまつり)は山車の海中渡御が行われます。4台の山車が氏子に引かれながら300メートルに渡って海を進む「海中渡御」は、半裸の氏子男衆の掛け声や水しぶきと共に、三谷の海岸が熱気とエネルギーに溢れます。海の中を渡って行く山車の姿は迫力ある圧巻の光景です。
「おぃさー」のかけ声のもと、大量の紙吹雪が舞う中を山車が練り歩く挙母祭りは祭りは2日間にわたり行われます。1日目は、八輌の見事な山車がそれぞれの町内を曳きまわり、夜は挙母神社において、八つの町の人々が提灯をもって五穀豊穣を祈願して境内を七周する「七度参り」が行われます。2日目は奉納のために山車が挙母神社に一斉に集まり、花火の号砲を合図に、紙吹雪とともに曳きまわります。
11月 参候祭り(さんぞろまつり)は、七福神が湯立てを行うユニークな祭りで、祭場の中央に湯立ての五徳が置かれ、その周囲を神々が舞う形で行われます。舞の型は特にないものの、神々が禰宜との問答を行うという決まり事があり、問答する初めに「さんそうろう」と答えるところから名がついたもので田楽の影響を受けたとされています。



愛知県の花はカキツバタ
愛知県の鳥はコノハズク
愛知県の木はハナノキ